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アメリカのオバマ大統領は、国防費の大幅削減に合わせた新たな国防戦略の基本方針を発表し、陸軍や海兵隊を縮小する一方で、中国の軍備増強を受けてアジア太平洋地域に重点を置いた配備を進めるとともに、日本など同盟国に対して、これまでよりも大きな負担を求めていく姿勢を示しました。 オバマ大統領は、5日、国防総省にみずから出向いて、パネッタ国防長官とともに記者会見し、2つの大規模戦争を同時に戦えるとしていた「二正面作戦」を見直すとともに、イラク戦争で中核を担った陸軍や海兵隊の部隊を削減することなどを盛り込んだ新たな国防戦略の基本方針を発表しました。基本方針は「アジア太平洋地域における中国の台頭が、将来的にアメリカ経済や安全にさまざまな影響を及ぼす可能性がある」として、中国の潜在的な脅威を強調しており、オバマ大統領も「アジア太平洋地域での展開力は強化し、国防費の削減はしない」と述べるなど、軍備増強を進める中国を強く意識したものになっています。そのうえでパネッタ長官は「同盟国が自国の領土や国益を守るための能力を強化できるよう、アメリカとして支援していく」と述べ、アメリカが国防予算を大幅に削減するなかで、日本など同盟国に対して、今後、より大きな負担を求めていく姿勢を明確にしました。基本方針の見直しは、3年連続で財政赤字が1兆ドルを超えるなかで、オバマ大統領が去年春、今後10年間で4900億ドル(日本円にして37兆円余り)の削減を目指す方針を示したことを受けて行われたもので、冷戦終結後、唯一の超大国として世界に部隊を派遣してきたアメリカが、財政的にそれを維持することが難しくなったことを物語っています。国防費を具体的にどのように削減していくかについては、オバマ大統領が、今後、数週間以内に予算教書を議会に提出して示すことになります。
外務省の横井報道官は、記者会見で「国防費を巡る厳しい状況のなか、アメリカがアジア太平洋地域へのコミットメントを強化するとの政策を改めて表明したことは、わが国を含む地域の安全保障に資するものと考えており、歓迎する」と述べました。そのうえで横井報道官は「わが国政府としては、今回発表された新たな戦略指針が、今後、この地域の米軍の体制などに、具体的にどのように反映されていくか注視していく」と述べました。 |